フリーランス・副業時代の”取引相手”信用調査|契約前にチェックすべきこと
「この会社と取引して大丈夫かな…」フリーランスや副業として仕事を受ける際、誰もが一度は感じる不安ではないでしょうか。自由な働き方が広がる一方で、報酬の未払いや一方的な契約変更といったトラブルに巻き込まれるリスクも増えています。岡山でフリーランスとして活動する方々からも、取引先との契約に関する相談が増えています。
厚生労働省の「フリーランス・トラブル110番」には、2022年の月平均で約600件以上の相談が寄せられており、そのうち約32%が「報酬の支払い」に関するものです。また、内閣官房などの調査では、フリーランスの約4割が報酬不払いや支払遅延などのトラブルを経験していることが明らかになっています。本記事では、契約前に自分でできる取引相手のチェック方法から、専門機関の活用まで、実践的な情報をお届けします。
出典:厚生労働省「フリーランス・トラブル110番の相談実績について」
結論
フリーランスや副業で取引を始める前には、必ず取引相手の基本的な信用調査を行うべきです。2024年11月に施行されたフリーランス新法により、発注者には書面での契約条件明示が義務付けられましたが、それでもトラブルはなくなりません。自己防衛として、契約前に以下の3つのステップを実践することが重要です。
契約前の必須チェック項目:
- 基本情報の確認 – 法人登記簿の閲覧、企業サイトやSNSでの評判調査
- 契約書の必須化 – 口約束は絶対に避け、業務範囲・報酬・支払期日を明記した契約書を交わす
- リスクの高い案件の見極め – 前払い制度の活用、エージェントサービスの利用検討
特に報酬額が大きい案件や長期契約の場合は、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業信用情報を取得することも検討しましょう。フリーランス個人でも月額495円から利用できるサービスがあります。
目次
フリーランスを取り巻くトラブルの実態
増え続ける報酬未払いとトラブル
フリーランス人口は増加を続けており、内閣官房の調査によると、2020年時点で本業・副業を含む広義のフリーランス人口は約462万人とされています。働き方の多様化に伴い、トラブルも増加傾向にあります。
厚生労働省の「フリーランス・トラブル110番」への相談件数は、2021年の月平均約350件から、2022年には月平均約600件へと大幅に増加しました。相談内容の内訳を見ると、「報酬の支払い」が32.1%、「契約内容」が22.4%と、全体の5割以上が金銭や契約に関するものです。
さらに深刻なのは、トラブルが発生しても適切な対応が取られていない現状です。令和3年度フリーランス実態調査では、フリーランスの約4割(39.2%)が報酬不払いや支払遅延などのトラブルを経験しており、また約4割が記載の不十分な発注書しか受け取っていないか、そもそも発注書を受領していないことが明らかになりました。
同じ令和3年度の調査では、トラブル経験者のうち51.9%が「そのまま受け入れた」、36.7%が「交渉するなどして、部分的に改善してから受け入れた」と回答しており、立場の弱さから、泣き寝入りせざるを得ない状況が浮き彫りになっています。
出典:厚生労働省「フリーランス・トラブル110番の相談実績について」
出典:内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「令和3年度フリーランス実態調査結果」
出典:内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「令和4年度フリーランス実態調査結果」
なぜトラブルが増えているのか
トラブルが増加している背景には、いくつかの要因があります。
1. SNSやマッチングサービスでの気軽な取引の増加
従来のように正式な業務委託契約を結ぶのではなく、SNSのDMやチャットアプリだけでやり取りして仕事を受けるケースが増えています。口約束やメッセージのみでの契約は、証拠が残りにくく、トラブル時の対応が困難になります。
2. 契約書を交わさない取引の多さ
前述の通り、フリーランスの約4割が「記載の不十分な発注書しか受け取っていない」か「そもそも発注書を受領していない」という状況です。契約書がない状態では、業務範囲が曖昧になり、予想外の追加作業を求められたり、突然契約を打ち切られたりするリスクが高まります。
3. 立場の弱さによる交渉力の欠如
「不当な扱いを受けても、今後の仕事に影響するのでは」という不安から、フリーランス側は強く主張できないケースが多いです。発注側も「どうせ法的措置は取らないだろう」と高をくくっている面があります。
フリーランス新法とは
2024年11月施行の新しい保護法
こうした状況を改善するため、2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法)が施行されました。この法律により、発注者には以下の義務が課されています。
発注者の主な義務:
- 書面またはメール・SNSなどで取引条件を明示すること
- 納品から60日以内に報酬を支払うこと
- フリーランスの責めに帰すべき事由なく、業務受領の拒否・一方的な報酬減額・返品をしてはならないこと
- ハラスメント対策を講じること
これらに違反した場合、公正取引委員会等から指導や勧告、場合によっては企業名の公表がなされる可能性があります。資本金の額に関わらず、すべての発注者が対象となるため、これまで下請法の対象外だった小規模企業にも適用されます。
ただし、新法が施行されても課題は残ります。PE-BANKの調査によると、約7割のITフリーランスエンジニアがフリーランス新法について「知らない」と回答しており、施行内容を「全て理解している」人はわずか2割未満です。また、3人に1人が「施行されても発注者との取引は改善されない」と回答し、その理由として「新法で定められても立場が弱く、不当性を感じても取引先に打診できるか不安」が最も多くなっています。
出典:内閣官房「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)等に係る取組について」
出典:厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」
出典:PE-BANK「フリーランス新法に関する実態調査」
自分でできる取引先の信用調査
基本情報の確認方法
取引を始める前に、最低限確認すべき基本情報があります。これらは無料または低コストで調べられるため、必ず実践しましょう。
1. 法人登記簿謄本の確認
取引相手が法人の場合、まず法務局で登記簿謄本を取得しましょう。オンライン請求なら窓口受取で1通490円(2025年4月改定後)、窓口なら600円で入手できます。登記簿で確認すべきポイントは以下の通りです。
- 会社が実在しているか(登記がない場合は詐欺の可能性)
- 資本金の額と変遷
- 代表者の氏名と住所
- 本店所在地の変更頻度(頻繁に変わっている場合は要注意)
- 役員の変更状況
個人事業主の場合は登記簿がありませんが、税務署へ提出した開業届のコピーを見せてもらうことで、事業の実在性を確認できます。
2. インターネットでの情報収集
企業名、代表者名で検索し、以下の情報を確認します。
- 公式サイトの有無と更新頻度
- 事業内容と実績
- SNSアカウントの活動状況
- 口コミサイトや就職サイトでの評判
- ネガティブ情報(法令違反、コンプライアンス違反など)
Googleで「企業名 評判」「企業名 トラブル」などと検索するだけでも、有益な情報が得られることがあります。
3. 企業情報データベースの活用
より詳しい情報が必要な場合は、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業情報データベースを利用できます。一部のサービスでは、月額495円の会費で検索が可能で、企業情報の詳細レポートは1社あたり1,430円〜2,200円程度で購入できます。個人事業主やフリーランスでも利用可能です。
出典:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
契約内容の確認ポイント
取引先の信用調査と同じくらい重要なのが、契約内容の明確化です。フリーランス新法により、発注者には取引条件の明示義務がありますが、受注者側も以下の点を必ず確認しましょう。
契約書に含めるべき項目:
- 業務内容の詳細 – 何をどこまでやるのか、修正回数の上限など
- 報酬額と計算方法 – 固定額か時間単価か、消費税の扱いなど
- 支払期日と支払方法 – 納品後何日以内に、どの方法で支払われるか
- 納期 – 明確な納品期限
- 著作権の扱い – 成果物の権利は誰に帰属するか
- 損害賠償条項 – トラブル時の責任範囲
- 解約条件 – どのような場合に契約を解除できるか
これらが曖昧なまま業務を開始すると、後からトラブルに発展するリスクが高まります。特に報酬の支払期日は、「納品後60日以内」という新法の規定を超えていないか確認しましょう。
注意すべき危険サイン
以下のような兆候がある取引先は、特に慎重な判断が必要です。
- 契約書の作成を渋る、口頭やチャットだけで済ませようとする
- 登記簿謄本や開業届の提示を拒否する
- 支払条件が「成果を見てから決める」など曖昧
- 前払いや着手金の支払いを提案しても拒否される
- 連絡先が個人の携帯電話番号やフリーメールのみ
- 事務所の住所がバーチャルオフィスやレンタルスペース
- 異常に好条件を提示してくる(相場より明らかに高額な報酬など)
- 過去の取引実績を明かさない
これらの兆候が複数当てはまる場合は、取引を見送るか、より慎重な調査を行うことをお勧めします。
岡山でのフリーランス・副業トラブル対策
岡山の地域特性
岡山県内でもフリーランスや副業として働く人が増えています。特に倉敷市や岡山市では、IT関連やデザイン、ライティングなど、オンラインで完結する仕事の需要が高まっています。一方で、地域の中小企業との取引では、都市部の企業に比べて契約書を交わす習慣が薄い傾向もあります。
岡山での取引で特に注意すべき点は以下の通りです。
- 地元企業との取引では、対面での打ち合わせを通じて相手の実態を確認しやすい
- 一方で、「顔が見える関係」だからと契約書を省略しがちになるリスクがある
- 岡山県内の商工会議所や商工会に相談できる窓口がある
地元企業との取引であっても、必ず契約書は交わすようにしましょう。むしろ、長期的な信頼関係を築くためにも、最初にきちんと契約条件を明文化することが重要です。
岡山で利用できる相談窓口
トラブルに遭った際、または契約前の相談先として、岡山県内でも以下の窓口が利用できます。
フリーランス・トラブル110番
電話:0120-532-110
受付時間:9:30〜16:30(土日祝日を除く)
無料・匿名で相談可能。契約、報酬、ハラスメントなどフリーランス特有のトラブルに対応
岡山県商工会連合会
県内各地の商工会で、事業に関する相談を受け付けています。地域の企業情報にも詳しいため、取引先の評判などを聞ける場合があります。
岡山弁護士会
法律相談が必要な場合は、岡山弁護士会の法律相談センターを利用できます。有料ですが、専門的なアドバイスを受けられます。
専門機関への調査依頼を検討すべきケース
自力での調査に限界を感じたら
基本的な信用調査は自分でできますが、以下のような場合は専門機関への依頼を検討しましょう。
- 取引額が大きい(数十万円以上)
- 長期契約を結ぶ予定がある
- 自力での調査で不審な点が見つかった
- 相手が情報開示を渋る
- 過去にトラブルの噂を聞いたことがある
信用調査会社の活用
帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社では、企業の詳細な財務情報や業績推移、信用評点などを提供しています。基本的な調査レポートは1社あたり2万円〜3万円程度ですが、会員になることで割安に利用できる場合もあります。
信用調査会社を利用するメリットは以下の通りです。
- 自社で調査する時間と労力を省ける
- 主観に囚われず、客観的なデータで判断できる
- 自力では入手できない財務情報や業績評価を得られる
- 第三者の専門家による公正な視点での評価
探偵事務所による公開情報の調査
信用調査会社では対応できない、より詳細な実態確認が必要な場合は、探偵事務所に相談することも選択肢の一つです。探偵事務所では、公開情報や合法的な範囲内での聞き込みなどにより、以下のような調査が可能です。
- 企業の実際の営業実態の確認(外観調査など)
- 事務所の実在性確認
- 公開情報に基づく代表者情報の整理
- 周辺での評判の聞き込み(合法的な範囲)
岡山県内にも、岡山県公安委員会に届出を行っている正規の探偵事務所があります。依頼する際は、必ず公安委員会への届出番号を確認し、料金体系が明確で、事前に見積もりを提示してくれる業者を選びましょう。また、探偵業法で禁止されている違法な調査(差別に繋がる調査、プライバシー侵害など)を依頼することはできませんので、ご注意ください。
ただし、探偵への依頼には相応の費用がかかるため、取引額とのバランスを考えて判断することが大切です。まずは自力でできる調査を徹底し、それでも不安が残る高額案件の場合に検討するとよいでしょう。
トラブルを未然に防ぐ実践的な対策
契約前の準備チェックリスト
新規取引を始める前に、以下のチェックリストを活用しましょう。
取引開始前の確認事項:
- □ 法人登記簿または開業届を確認した
- □ インターネットで企業情報と評判を調べた
- □ ネガティブ情報がないか検索した
- □ 事務所の実在を確認した(可能なら訪問)
- □ 業務内容を詳細に記載した契約書を作成した
- □ 報酬額と支払期日を明記した
- □ 契約書に双方の署名・捺印をもらった
- □ やり取りはすべてメールなど記録に残る形で行っている
- □ 着手金または前払いの交渉をした(可能な場合)
エージェントサービスの活用
トラブルリスクを最小限に抑える方法として、フリーランス向けエージェントサービスの利用も効果的です。PE-BANKの調査によると、エージェントサービスに登録している人はわずか14.7%ですが、登録者の62.3%が「業務調整がしやすい」、47.2%が「トラブルが起きにくい」、43.4%が「報酬や条件の交渉がしやすい」とメリットを感じています。
エージェントサービスのメリット:
- 事前にクライアントの信頼性が確認されている
- 契約書の作成や報酬交渉をエージェントが代行
- トラブル発生時にエージェントが間に入って対応
- 報酬の未払いリスクが低い(エージェント経由での支払い)
- 福利厚生サービスを受けられる場合もある
デメリットとしては、エージェントへの手数料(報酬の10〜30%程度)がかかることですが、安心して仕事に集中できる環境と引き換えと考えれば、決して高くはありません。
記録を残す習慣
すべての業務上のやり取りは、必ず記録に残しましょう。トラブルが発生した際の証拠となります。
- メールやチャットでのやり取りは保存しておく
- 電話での会話内容は後からメールで要約して送る
- 対面での打ち合わせ内容は議事録にまとめる
- 納品物と納品日時の記録を残す
- 請求書の発行日と内容を記録する
SNSやチャットアプリはメッセージの削除が容易なため、重要な内容はメールでも送り、確実に証拠を残すことが大切です。
よくある質問
- 取引先の信用調査をしていることが相手に伝わると、関係が悪くなりませんか?
- 基本的な情報収集(登記簿の閲覧、インターネット検索など)は、相手に知られることなく行えます。「調査します」とわざわざ通告する必要はありませんし、むしろ言わない方がマナーです。自社の経営に影響を与える取引の前に信用調査を行うのは当然のことで、決して失礼には当たりません。
- 口頭やチャットでの約束も契約として有効ですか?
- 法律上は口頭での合意も契約として成立しますが、トラブル時に証拠がないため、権利を主張することが困難になります。フリーランス新法でも、発注者には取引条件の書面またはメール等での明示義務があります。必ず契約書または発注書を交わすようにしましょう。チャットでのやり取りも記録として残りますが、改ざんや削除のリスクがあるため、重要事項はメールでも確認することをお勧めします。
- 報酬が未払いになった場合、どうすればいいですか?
- まずはメールや電話で督促しましょう。それでも支払われない場合は、内容証明郵便を送付して最終通告をします。それでも解決しない場合は、フリーランス・トラブル110番(0120-532-110)に相談するか、支払督促や少額訴訟などの法的手続きを検討します。弁護士への相談も有効ですが、費用対効果を考慮する必要があります。
- 契約書のひな形はどこで入手できますか?
- フリーランス協会や厚生労働省のウェブサイトで、業務委託契約書のひな形が無料でダウンロードできます。ただし、ひな形をそのまま使うのではなく、自分の業種や案件に合わせて内容をカスタマイズすることが重要です。不安な場合は、フリーランス・トラブル110番で契約書の内容について相談できます(網羅的なリーガルチェックは不可)。
- 個人事業主との取引でも信用調査は必要ですか?
- 個人事業主の場合、法人に比べて調査できる情報が限られますが、基本的な確認は必要です。開業届の提示を依頼する、過去の取引実績やポートフォリオを確認する、SNSやウェブサイトでの活動状況を調べる、などの方法で信用性をある程度判断できます。特に高額な前払いを求められた場合は、慎重な判断が必要です。
- エージェントサービスと直接契約、どちらがいいですか?
- それぞれにメリット・デメリットがあります。エージェント経由は手数料がかかりますが、契約やトラブル対応のサポート、安定した支払いが期待できます。直接契約は報酬を100%受け取れますが、すべて自己責任で対応する必要があります。初めての取引先や高額案件はエージェント経由、信頼できる継続取引先とは直接契約、というように使い分けるのも一つの方法です。
まとめ
フリーランスや副業として働く自由は魅力的ですが、その分自己防衛の意識も必要です。政府の調査では、フリーランスの約4割が何らかのトラブルを経験しています。契約前に不安を感じたら、基本的な信用調査を行い、契約書を必ず交わしましょう。トラブルに遭ってしまったら、フリーランス・トラブル110番や弁護士など、適切な専門家に相談してください。
立場の弱さから泣き寝入りするのではなく、正当な権利を主張し、健全なビジネス関係を築いていきましょう。契約は信頼関係の第一歩であり、大切な自分の仕事と収入を守るための手段です。
取引先の信用調査でお困りの方へ
「この取引先、本当に大丈夫かな…」そんな不安を抱えたまま契約するのは危険です。オカタン探偵社(岡山県公安委員会届出番号:第72250015号)では、フリーランス・個人事業主の方からの取引先に関するご相談も承っております。
このような不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください:
- 高額な案件なので、契約前に相手の実態を確認したい
- 会社の登記はあるが、実際に営業しているか確認したい
- 契約書の内容に不審な点があり、相手の信用度を確かめたい
初回相談は無料です。お電話またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
※探偵業法により、違法な調査はお受けできません。公開情報の調査や合法的な範囲での実態確認など、適法な方法でサポートいたします。